ボランティア拒否宣言
                  
           《花田 えくぼ》


それを言ったらオシマイと言う前に
一体私に何が始まっていたと言うの
何時だってオシマイの 向こうにしかハジマリは無い
その向こう側に 私は車椅子を漕(こ)ぎ出すのだ

ボランティアこそ 私の敵
     私 はボランティアの犬達を 拒否する


  ボランティアの犬達は 
       私を優しく自滅させる

ボランティアの犬達は 
     私を巧(たくみ)に甘えさせる

  ボランティアの犬達は 
       アテにならぬものを頼らせる

ボランティアの犬達は 
     残された僅(わずか)かな筋力を弱らせる

  ボランティアの犬達は 
        私をアクセサリーにして街を歩く

ボランティアの犬達は 
     車椅子の蔭で出来上がっている

  ボランティアの犬達は 
        私を優しい青年達の結婚式を飾る哀れな道具にする

ボランティアの犬達は 
     私を 夏休みの宿題にする

  ボランティアの犬達は 
       彼らの子供達に観察日記を書かせる

ボランティアの犬達は 
     私の我がままと頑(かたく)なを確かな権利であると主張させる

  ボランティアの犬達は 
       ごう慢と無知をかけがえのない個性であると信じ込ませる

ボランティアの犬達は 
     非常識と非協調をたくましい行動だと煽りたてる

  ボランティアの犬達は 
       文化住宅に解放区を作り自立の旗を掲げてたむろする

ボランティアの犬達は 
     私と社会の間に溝を掘り幻想の中に孤立させる


私はその犬達に尻尾を振った

私は彼らの巧みな優しさに飼い慣らされた

汚い手で顎(あご)をさすられた

私はもう彼らをいい気持ちにさせて上げない

今度その手が伸びてきたら

私は きっとその手に噛みついてやる

ごめんね
 私の心のかわいそうな狼
  少しの間 私はお前を忘れていた
    誇り高い狼の顔で
    オシマイの向こう側に
     車椅子を漕ぎ出すのだ



 おおさか行動する障害者応援センターからの了解を得て
   機関紙『すたこらさん』1986年10月号から 引用させていただきました。


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